暗闇のなかでも、星は輝き続ける。孤独を抱えながら、美しい憂いを帯びた“歌”響かせる彼女のように。
デビュー10周年のアニバーサリーイヤーを迎えた中島美嘉から、ニューアルバム「STAR」が届けられた。
'00年代のスタンダードとなった1stシングル「STARS」以来、「見えない星」「ORION」、そして「流れ星」など、彼女が星にまつわる名曲を数多く残してきたことはご存知の通り。「自然と星をテーマにした曲が集まってくるんですよね。ホントに不思議なんだけど」と“星”との親和性を語る彼女は−−その左手首には星のタトゥーが刻まれている−−自らの存在を象徴するような「STAR」というタイトルに対し、深く、強い思いを抱いている。
“STAR”としての自らの存在を受け入れる覚悟と自覚。アルバムのテーマにもつながるそんな思いがもっとも端的に示されているのは、彼女自身が歌詞を手がけている「LONELY STAR」だろう。'10年代の最新型ポップチューンをダイレクトに反映したエレクトロサウンドのなかで彼女は、トップ・アーティストとしての孤独を抱えながらも、しっかりと前を向いて進んでいこうとする意思を軽やかに歌い上げている。
音楽、ビジュアル、ステージングなどにおいて、「自分がやりたいことは、いつも明確にある」という彼女。強い意志で“やりたいこと”を貫き、自らのポジションを獲得してきた彼女の生き方は、周囲の目を気にしながら、自分自身を殻のなかに閉じ込めている人々にとって、まさに光り輝く希望として映るのかもしれない。
もうひとつ強調しておきたいのは、「STAR」というアルバムが、この2年間における“シンガー・中島美嘉”の充実ぶりをはっきりと証明しているという事実だ。バラードシンガーとしてのオーセンティックな魅力を改めて示した「ALWAYS」、「光り輝くために僕ら/この瞬間(とき)を今乗り越えていこう」という前向きなリリックと最新鋭のエレクトロサウンドがひとつになった「Over Load」、サーカスをモチーフにした世界観とジャズ〜ヒップホップ〜エレクトロが交差するトラックがひとつになった「CANDY GIRL」、ノスタルジックな旋律が心の深い部分を揺さぶるバラードナンバー「一番綺麗な私を」、暖かいメロディのなかで「だから明日が雨でも 私は歌うよ/今よりもっと 遠くへもっと」というフレーズ−−彼女自身のなかにある“歌”への決意が感じられるような−−が広がっていく「SONG FOR A WISH」。悲しみ、切なさをたっぷりと含みながら、決してネガティブな場所に逃げることなく、美しくも前向きな歌へと昇華していく。彼女の表現はここにきて、豊かな実りの季節を迎えているようだ。
コミカルな演技が話題を呼んだ「うぬぼれ刑事」(脚本/宮藤官九郎)、そしてアメリカ映画「バイオハザードW」への出演など、女優としての活動も広がっている中島美嘉(「歌と演技の表現方法は似ているところがあって、すごく勉強になる」とか)。デビュー10周年、そして、アルバム「STAR」によって彼女の存在はさらに輝きを増していくことになるだろう。
文:森朋之