中島美嘉の「雪の華」が、リリースから15年目を迎える。2003年10月1日に発売されたこの曲は、作詞家のSatomi(「月のしずく」柴咲コウ、「Anniversary」KinKi Kidsなど)、作曲家の松本良喜(「ALL FOR YOU」安室奈美恵、「雪白の月」KinKi Kids)が手がけたバラードナンバー。
‘01年のデビュー以来、「STARS」「WILL」などのバラードを発表してきた彼女は、「雪の華」によって“切なさと憂いを美しく表現するシンガー”というイメージを決定づけたといっても過言ではない。
「雪の華」のほか、「FIND THE WAY」「愛してる」が収録された2ndアルバム「LOVE」(2003年)は前作「TRUE」に続きミリオンセラーを記録。
一時的な人気ではなく、質の高い楽曲、豊かなボーカルの表現力を含め、アーティスト・中島美嘉の魅力が広く認知されたことも、ここに記しておきたい。
叙情的なメロディライン、ピアノ、ストリングスを中心とした有機的なサウンドメイク、そして、雪が舞い落ちる景色のなか、“君とこのまま一緒にいたい”という切実な思いを描き出した歌詞がひとつになった「雪の華」。この曲は数多くのアーティスト、シンガーにカバーしたことでも知られている。森山良子、藤井フミヤ、徳永英明、中森明菜、河村隆一といった日本を代表するシンガーがそれぞれ魅力的なカバーを発表しているほか、Boyz ⅡMEN、K-Ci&Jojo、パク・ヒョヒンなど海外のアーティストも「雪の華」を取り上げている。アジア圏はもちろん、この曲はいまや、世界中のリスナーに親しまれていると言っていい。その事実は、「雪の華」が国境や時代を超えて愛され続けていることをはっきりと証明していると思う。
そして言うまでもなく、この名バラードの良さをもっとも引き出せるのは、中島美嘉であると。天性のブルーズと称すべき、心地よい憂いをたたえた歌声。ひとつひとつのフレーズを丁寧に手渡すようなボーカリゼーション。そして、“今年、最初の雪の華を”というサビのラインが聴こえてきた瞬間に訪れる、圧倒的なカタルシス。彼女自身がインタビューの場で「私はずっと曲に恵まれてきたけど、そのなかでもいちばん好きな曲のひとつ」と語る
「雪の華」は、中島美嘉というシンガーの豊かな魅力をもっともダイレクトに伝える楽曲と言ってもいいだろう。
これまで行われてきた全国ツアー、アコースティック楽器を主体とした“プラミアムライブ”でもたびたび披露され、彼女自身のキャリアの積み重ねとともに成熟の度合いを深めてきた「雪の華」。その最新バージョンが、11月にリリースされるアコースティックセルフカバーアルバム「POTRAIT~Piano&Voice~」に収録されている。河野伸(Piano)、海老沼崇史(B)とともにライブ録音されたこのバージョンを聴けば、この楽曲と中島美嘉の奥深い関係性を実感してもらえるはずだ。いまや日本のスタンダートとなった「雪の華」の普遍的な魅力をぜひ、この機会に改めて堪能してほしいと思う。
文・ライター森 朋之